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秋田県由利本荘市町村字木戸口

震災前取材

 

この瑞光寺には、唐から来たと云う万箇将軍の墓と伝えられる塚があるが、次のような「化物問答」の伝説も伝えられている。

昔、夜な夜な本堂に化け物が現われ、鐘の音がゴーン、木魚がポクポク、そしてプクプクと経を唱え騒ぐのだった。和尚は困り、ある晩その騒ぎの最中に本堂に入り、パッと明かりをつけたが何物の姿も見えない。和尚がどうしたものか考えていると、どこからともなく、「一足、四足、八足の畜生、これいかん」と問答を求める声がしたが、和尚はこれに答えることができなかった。

ある日の朝、和尚が外に出ると初雪が降り、一面銀世界になっていた。庭をふと見ると、そこには一本足のキジの足跡、ムジナの大きな足跡、蟹の足跡が残っていた。和尚は、ハハーンと気が付いた。蟹は蟹沼に住む大蟹、ムジナは中山の主の大ムジナ、一本足のキジは猟師に片足を撃たれたが年を経た鳥で、これらはこの地で評判になっていた三怪物だった。

夜の騒ぎは、本堂の破れたところから入りこんだこの三怪物たちが、キジはくちばしで鐘を鳴らし、ムジナは尾で木魚をたたき、蟹はプクプクと泡を出して経をまねていたのだと和尚はわかった。

その晩、また本堂が騒々しいので和尚が本堂に入っていくと、「一足、四足、八足の畜生、これいかん」と問われた。和尚はすかさず、「一本足のキジ、中山のムジナ、蟹沼の大蟹じゃー」と叫んだところ、本堂はしんと静かになり、その後は化け物は現われなくなったという。