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秋田県由利本荘市前郷字西川町

震災前取材

 

江戸時代のこの地域の物資の輸送は、子吉川を利用した川舟の運送が中心だった。沿岸には多くの舟着場があり、中でもこの前郷舟着場は、滝沢郷の中心地にあり大いに賑わった。一艘の舟に、米であれば80から100俵ほど積まれたという。

この地に運送店が開業されると、本荘古雪港から矢島行きとして積まれた物資はここで下ろされ、昼夜の別なく矢島に急送された。

川を下るときは「下り荷」と称し、米、酒、木炭などを積み、本荘までの約20kmの区間を1時間半ほどで運んだ。上るときは「上り荷」と称し、塩、鮮魚、干し魚、油その他の雑貨を積み、帆を上げて順風を受けて快走した。しかし、無風や逆風のときは帆を下ろし、舟に長い綱をつけて舟方が肩にかけ、河岸をはらばうようにして遡るため、一日がかりの重労働だった。

この川舟運送は、鉄道開通の大正末期まで続いた。