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秋田県由利本荘市矢島町元町字相庭館

震災前取材

 

土田家住宅は、秋田県で17世紀まで溯る最も古い農家の遺構として国の重要文化財に指定されている。建物は昭和59年(1984)、解体修理工事が行われ復原されたもの。

建築年代は明らかではないが、家伝では、延宝6年(1678)に没した初代が建てたものといわれており、構造や工法からも17世紀の建築であることは明らかである。

この住宅は「中門造り」の系統のもので、後世の完成された中門造りとは異なり、建築年代の古さと、中世以来の武士住宅の系譜を引く「主殿造り」の要素を併せ持っている。建物は、桁行10間、梁間5間の本屋に、座敷中門1間を突出させており、内部は土間部分が建物の3分の1を有している。残りは床上部で、座敷2室を並べここを接客空間とし、この南面に中門を突出させている。上座敷には床の間があり、この部屋だけに天井が設けられていた。

土田家の祖は、木曽義仲の四天王の一人、根井小弥太行親の末えいとされる。信濃の佐久地方を本拠としていたが、鎌倉期に矢島や直根を領し下向し、豊臣秀吉から朱印状が与えられ、由利十二頭の一人として、この地域の独立した小領主として処遇されていた。

根井氏は矢島氏に近く、矢島五郎満安が十二頭の総攻めにより破れ滅亡すると、この時期に根井氏は武士を捨て帰農し、江戸時代の初頭に現在地に居住したと伝えられる。