2014/01/01

 

歴史散策⇒伊豆沼

紅白歌合戦の騒々しさにはなじめない私は、昨夜は借りてきたDVDをのんびりと見て、真夜中、伊豆沼で初日の出を拝もうと国道4号線を北上した。

伊豆沼はラムサール条約で野鳥の保護区になっている。地域の方々が野鳥の保護に当たり、計画的にエサなども与えていたようだが、鳥インフルエンザ騒動が起きてからは、人への感染を恐れ、エサを与えることは自粛されている。それは野鳥達にとって幸なのか不幸なのかは分からないが、以前よりもエサ探しの苦労は増していることだろう。

古代までは、宮城県北部は蝦夷の勢力圏であったようで、大崎市以北には蝦夷に関わる伝説が多くなる。昔、伊豆沼周辺は今よりもはるかに広大な湿地帯だったはずで、野鳥はもとより、フナやナマズが生息する、見た目よりははるかに豊かな地だったはずだ。そして蝦夷たちがその自然と調和しながら、生活圏としていた。

それが大和朝廷の勢力がこの地に及ぶに到り、幾度か武力衝突があり、蝦夷は次第にこの地から遠ざけられていったのだろう。恐らくはこのようなことからだろう、伊豆沼周辺には、坂上田村麻呂に関する伝説が多く伝えられる。

伊豆沼はこれまで三度ほど訪れ、撮影ポイントもわかっていた。そのため、夜も白み始めてからポイントを探して慌しく走りまわることも無い。天気は時折小雨が降る曇り空だが、東の空にわずかに雲の切れ目がある。すっきり晴れた日の日の出はもちろん美しいが、雲の切れ目から見る日の出も趣がある。雲があることで、その色彩の変化は、晴れわたった空よりも複雑だ。

暗闇の中、懐中電灯の光で湖岸で三脚にカメラを据えた。間近で、白鳥の鳴き声と羽ばたく音が聞こえる。飛び立つ前の体慣らしなのか、雁の羽音と、水をたたき水上を駆けまわる音がする。日の出とともに雁はエサを求めて一斉に飛び立つはずだ。伊豆沼の日の出は、静寂の中ではなく、野鳥達の喧騒の中で迎えることになる。

東の空がわずかに明るくなり始めてからすぐに撮影を始めた。日の出の美しさは、暗闇から始まる。雲のわずかの切れ目が白み始めると、その周辺の雲が濃い青色に染まる。それが次第に紫色に変化し、遂には朱色に染まり始める。白鳥たちが沖へと移動し始める。

一瞬、雲の切れ目から一筋の光が差すと、明るさが急激に増した。湖面のあちこちで雁が群れをなして水面をたたき飛び立ち、伊豆沼は喧騒の中で赤く染まった。日の光に向かい手を合せ、未だに震災から立ち直れない多くの地域の復興を祈った。無信仰の私だが、こういう祈りが無駄なものとは思えないことがまた不思議だった。