2013/11/07

 

歴史散策⇒磐司岩

しばらく内業が続き、またぞろ放浪癖が頭をもたげ始めていた。しかしやるべきことは山積しており、気ままな放浪ができる状況ではなかった。それでも一旦頭をもたげ始めた放浪癖の虫を押さえつけるのは容易ではなく、近場に出かけておとなしくさせるしかなかった。

ちょうど紅葉の時期にあたり、その鼻先は仙台の町中でも見かけるようになっていた。昨日はどこに出かけようか迷いに迷った挙句、この磐司岩を訪れることにした。

磐司岩は、仙台の奥座敷とも称されている秋保温泉のさらに奥の、名取川の最上流に位置する大岩壁であり、紅葉の名所でもある。幾度か出かけたことはあるが、思えば紅葉の時期に訪れたことはなかったかもしれない。

県道62号線、かつての二口街道を進み、秋保温泉を過ぎてさらに進むと秋保大滝がある。結構多くの観光客が、紅葉を求めて来ていた。この地には大滝不動尊があり、すでに幾度か訪れていたが、人の多さに誘われ、駐車場に車を停め、露店の土産物屋をのぞいて見た。はっきり言ってたいしたものは置いてはいないが、「猿の腰掛」や、野草や、キノコなど、日常とは違うものを見るのは、なにがしか心がはずむ。

この大滝不動尊は、知る人ぞ知る、山寺の「奥の院」になっているのだ。この二口街道は、この先そのまま進めば山寺に抜けるのだ。本来であれば、この不動尊を奥の院とすれば、山形側の山寺からこの地に到るのが「正しい?」のかもしれない。今日の散策地の磐司岩には、磐司、磐三郎の盗賊の兄弟の伝説があり、また山寺にも、その開山時に慈覚大師に協力したとする伝説が残っている。

この二口街道を、この地から山を越え山寺に行こうとしたこともあったが、地図からその道の状況を見るだけでその厳しさは予想され、夕暮れも近かったこともあり敬遠し、未だに実現していない。

一休みした後、いよいよ磐司岩に向かう。この秋保大滝の先に行く方は殆どいないようだ。秋保ビジターセンターを過ぎれば二口峡谷となり舗装も切れ山道を走ることになる。深い険しい峡谷で紅葉が美しい。少し時期的には遅かったようで、落葉気味の木々も多いが、それでも明るい日差しに照らされた山々の紅葉は美しく輝いている。

姉滝から少し進むと磐司岩がその雄大な姿を見せて来る。紅葉に縁どられ、陽を浴びて輝く大岩壁はまことに美しい。しかし日が暮れ始めれば、峡谷の中にそそりたつその岸壁は、黒々と沈み、言い知れぬ恐ろしさを見せるだろう。その天と地ほどの落差に、人々は畏敬の念を抱いたのではないだろうか。

麓の木々の間をよくよく見れば、岩の上などのあちこちに、石仏や地蔵尊が建っている。やはりこの道は、山寺と大滝不動尊を結ぶ宗教の道なのだ。