2012/01/01

 

歴史散策⇒西行戻しの松

松島の「西行戻しの松」の地に、初日の出を拝みに出かけた。天気予報では、どうやら日の出は拝めるみたいだが、どこに出かけるか迷った。

日の出を美しく臨める地は多くあるが、出来れば災害の傷跡を、希望の初日の出の風景の中に入れたくはなく、沿岸地区も比較的被害が少なかった松島を選んだ。

元旦の未明までビデオ映画で時間をつぶし、早くに松島に向った。現地には、すでに何台かの車が駐車しており、私は撮影ポイントを考え、もっとも高台に車を置いた。

しばらくすると、東の空が白み始め、早速防寒服を着て、三脚を出しカメラをセットした。薄闇の中の島々が美しいシルエットを見せている。シャッターを切る。何度かシャッターを切る間に、ギャラリーが増え始めた。恋人同士らしいカップルや、老夫婦、子供連れのご家族、職場が同じらしい若いグループ。

ふと下を見ると、下の駐車場は一杯になっており、車は身動きできない状態になっているようだ。カーステレオだろうか、大音量でドンツクドンツク鳴り始めた。この台地の下を走る国道45号線からは、暴走族の集団が走っているのだろう、バオバオと爆音が響いている。

正直、興ざめだった。今回の大震災では、多くの方々が互いに助け合い、今も苦しい生活の中でつながりあい生きている。私の勝手な思い込みでは、この初日の出は、亡くなった方々の鎮魂と、多くの被災した方々の多幸を祈るものだった。どうもそうは思っていない方々も多いらしい。

太陽は、その姿をほぼ現していた。その後の何枚かの写真は、興ざめした思いの中で義務的に撮った。いつもなら、日が高く上り、海面が光るまで撮り続けるのだが、すでに気力は失せており、そそくさと帰り支度をし、日の出に手を合わせ車に乗った。

乱雑に停められた車の間を縫うように降りてくると、途中一組の老夫婦と、一団の若者たちが、日の出に向って熱心に手を合せている。例のドンツクカーステレオと、バオバオ暴走族の音は聞こえ続けていたが、心のとげが溶けていくようで、穏やかな気持ちに戻ることができ、この若者たちと老夫婦に感謝し帰途についた。