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宮城県松島町松島字犬田

震災前取材

諸国を遍歴していた西行法師がこの地で休んで「月にそふ 桂男の かよひ来て すすきはらむは 誰が子なるらん」と和歌を詠むと、傍らで鎌で草を刈っていた童がそれをわらい、「雨も降り 霞もかかり 霧もふりて はらむすすきは 誰が子なるらん」と西行の歌を翻案して詠んだ。

西行が驚いてなりわいをたずねると、「冬萌えて、夏枯草を刈って業としている」と答えたが、西行はその意を解せず恥じていると、「松島は霊区で、才人が多い。恥を残すより速やかに帰るが良い」と言うので、西行はここを立ち去った。この童は山王の神の化身であったという。

また次のような言い伝えもある。

西行が北面の武士であったころ、通じた官女に「あこぎである」とたしなめられ、その意を解せず出家した。東国に下りこの地を過ぎるとき、一人の老人が牛に草を食わせていた。老人は牛が飽きもせず草を食べているので、「あこぎである」と叱った。西行が驚いてその意味を尋ねると、老人は「伊勢の海 あこぎが浦に ひく網も たび重なれば あらわれやせん」と古歌を引いて答えた。この老人は松島明神であったと云う。