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福島県南会津町山口

震災前取材

  • 入り口
伊南川右岸に、天狗の岩屋があったという奇岩がそそり立っている。その下に小さな鳥居が立ち、天狗を祀る祠がある。

この地には、次のような天狗の伝説が伝えられる。

昔、この天狗岩の岩屋に女天狗が住んでおり、伊南川を挟んだ山には男天狗が住んでいた。この男天狗と女天狗は仲の良い夫婦天狗だった。

ところがある時、ちょっとした自慢話から、両方ともに一歩も譲らぬ大喧嘩になってしまった。夫婦天狗は3日3晩、伊南川を挟み石つぶてを投げ合った。

男天狗の山には固い丸い石、女天狗のこの山には柔らかな丸い石が多かった。両者ともにさかんに投げ合ったが、女天狗の投げる石は軽く、男天狗のところまで届かないのに比べ、男天狗の石は女天狗のところまでゆうに届いた。

このため、女天狗はとうとう負けてしまい、いずこかへと姿を隠してしまった。男天狗は勝ったものの、一人になってしまい話す相手もいなくなり、いつしかいなくなってしまった。

かつては、女天狗の投げた軽石が男天狗の住んでいた山麓でよく拾われ、男天狗の投げた堅くてイボイボのある石はこの地のあたりでよく拾われた。天狗祭りに、この天狗の飛礫を拾い、女天狗の神前に3年続けて供えると、御利益があると伝えられる。