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福島県小野町谷津作字鬼石

震災前取材

 

小野小町の母の愛子(めずらこ)は、帝の命で、娘とともに都に上った夫の篁(たかむら)が、この地に戻る日はないと諦めつつも、必ず帰るとの篁の別れの言葉を思い出しながらこの地で暮らしていた。年を経るごとに、遥かな都の地の夫と 娘の身の上に思いは募るばかりだった。月の明るい夜などは、侍女を伴い、丘の頂の大石に佇み、矢大臣山を眺めて思いに沈んだ。

あるとき、このような様子を見た鬼どもが、悪さをしようと、度々館に押しかけて来るようになり、愛子や侍女たちを困らせていた。お館様として愛子を敬愛していた里人たちは、これを聞いて激怒し、替え玉を使って鬼をおびき寄せ、手に手に武器を持ち、一挙に鬼を捕まえた。里人たちは、この石の上で鬼を制裁し、鬼は涙を流して謝り改心を誓ったという。