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福島県小野町皮籠石字漆平(極楽寺)

震災前取材

 

この極楽寺に、むかしデンスケ坊という小僧さんがいた。寺の和尚様はとても厳しく、特に食べ物に関してはうるさく、小僧さんにはわずかな食べ物しか与えなかっ た。それでも自分はこっそりご馳走を隠したりしていた。

ある時、デンスケ坊はお腹がすいて辛抱できなくなり、和尚様が隠していたご馳走をこっそりと盗んで食べてしまった。和尚様は、これを知ると大変怒り、小僧さんを寺から追い出してしまった。

追い出された小僧さんは行く当てもなく、鐘つき堂の下の藪に隠れ潜んでいた。寺に来る村人達は、小僧さんが藪に隠れているのを知りながらも、気の毒に思い見て見ぬふりをしていた。しかし、デンスケ坊は、意地の悪い村人に見つかってしまい、引きずり出され、そこに村役人もやってきて、二人で殴る蹴るしているうちに小僧さんは死んでしまった。

その年の九月ころ、小僧さんを引きずり出した村人が、栗拾いに山道を歩いていると、道をふさぐ様に大きな桜の木がたおれていた。何気なくまたぐと、その木がズルズルと動き出した。桜の木と思っていたのは、なんと大蛇だった。この村人は、その後気がふれて死んでしまったと云う。

村人たちは、これはデンスケ坊の祟りだと噂し、地蔵を建てて小僧さんを供養する祭りを行うようになった。その後、ある年に大雨が降って近くの車川が氾濫し、大きな木が流されていった。その木は、ふだんと違い、根元が先になって流されていった。それを見ていた村人たちは、大蛇が川を下って行ったのだろうと話したと云う。

それ以来、村では川流れで死ぬ人がいなくなったが、ひところお祭りを休んでいたことがあった。すると、その時期に子供が池に入って死んだので、またお祭りをするようになり、今でも盆の18日に本祭りを行い、3月には、寺の下の屋敷で母親たちが集まってお祭りをしていると云う。