スポンサーリンク

秋田県由利本荘市岩城下黒川中村

2017/05/11取材

 

羽後亀田駅の南東方向に小田巻山という山があり、かつてこの山麓には沼があったという。この地には複数の大蛇伝説が伝えられている。モチーフは一つのようだが、家によって集落によって様々なバリエーションがあったようだ。

小田巻山の麓にフユという美しい娘がいたが、素性のわからない武士が通ってきて、身ごもった。老婆が武士の袷の裾に糸の枠を付けた。その糸を辿って行くと武士は小田巻沼に消え、武士は沼の主の大蛇だった。娘を大蛇に奪われた老婆は千手観音から娘を菖蒲湯に入れろと教えられ、その通りにすると娘の体から無数の子蛇が出て来て、大蛇は山の頂上で死んでいた。

昔、フユという美しい娘がいた。娘は御殿勤めをしていたが、密かに思いを通わしている男がいた。娘が里帰りする際にはたびたびこの男が通ってきた。フユの母親は、この男の正体をつきとめようと、男の着物の裾に糸をつけ、その糸の跡をたどった。糸は小田巻沼に消えており、その男が蛇の化身だと知った。母親が娘を菖蒲湯に入れると、娘の体からはたくさんの小蛇が出てきて、翌朝には小田巻山で蛇の死体がみつかった。人々は恐れ、頂上に八大竜王の神社を建て蛇を供養したと云う。

小田巻山のふもとの家に美しい娘が住んでいた。この娘の元へ毎夜のごとく通う若いひとりの武士がいた。その男は名も告げず住所も教えずに、夜が明けると去って行った。不思議に思った娘がこっそりと武士の後をつけてみると、武士は小田巻沼の水中へ入り姿を消してしまった。その武士が蛇の化身と知った娘は、菖蒲湯に入り身を清め、神に祈った。その夜も武士が現れたが、菖蒲湯の霊験のために娘に近づくことができずに帰った。以来、その武士は、娘の前に姿を現さなかったという。