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秋田県大仙市協和上淀川字上淀川

震災前取材

 

上淀川宿は、羽州街道と盛岡に抜ける雫石街道の分岐する位置にあり、秋田久保田城下への4つ前の宿場である。近年大火があり、古い町並みは残っていないが、枡形状の道路にその面影を残し、また地域内には伝説を多く残している。

その内の一つに、三湖伝説に関わる八郎太郎の伝説が伝えられる。

むかし、この上淀川のある宿屋に、毎年同じ時期に1人の僧が来るようになった。いつも決まって奥まった部屋を頼み、翌朝旅立つ時には大枚の金子を置いていった。そのようなことがしばらく続き、貧乏だったその宿は、次第に金持ちになった。

ある年、またいつものようにその僧が現れ、女中にいつものように中を覗かないように注意して奥の部屋に入った。ところがこの女中が、夜中にこっそり覗いたところ、大蛇が屏風に鎌首をもたげて眠っていた。女中は悲鳴をあげて腰を抜かし、その声に驚いた家人たちが何事かと出てきたときには、旅の僧が女中を介抱しているところだった。この僧こそ、八郎潟の主である八郎が田沢湖の辰子のところに通う姿だった。

翌朝、その僧は何事もなかったように大枚の金子を置いていったが、翌年からはこの宿に立ち寄ることはなくなり、宿屋はまた昔のように貧乏になっていったという。