岩手県盛岡市名須川町…報恩寺

震災前取材

五百羅漢は報恩寺の羅漢堂に 納められた尊像で、499体が現存している。これらの像は、享保16年(1731)、報恩寺第十七世和尚が大願主として造立したもので、4年後に完成した。尊像は京都で9人の仏師によって製作され、盛岡に運んだ際の輸送用の箱はその台座として利用されている。

羅漢とは、仏教において、尊敬や施しを受けるに相応しい聖者のことをいい、五百という数字は、多数という意味で、それぞれの尊者に名前はなく、服装からは、印度、西域、支那の僧の風貌容姿が連想される。像の中には、マルコ・ポーロやフビライ・ハンの像もあると云う。

現存する五百羅漢は、全国で50例ほど確認されているが、木彫りで499体が現存し、造立年代、尊像の製作者まで明確に知り得るのは、全国的にもまれな例とされる。

羅漢堂には,享保20年(1735)の棟札があり、羅漢像の完成により造営されたと考えられる。御影石の土台上に総壁の方形造りの土蔵仕立てで、屋根は瓦葺、梁・柱・桁木等巨材を惜しみなく使用している。礼壇上の天丼に狩野林泉筆といわれる見事な竜図が描かれている。