岩手県一関市花泉字町
2011/12/06取材
一関には「かさこじぞう」の民話が伝えられている。この民話は全国的にも良く聞かれるもので、全国に「傘地蔵」の民話は4ヶ所あると云う。貧しいが心の清い老夫婦が、道端の地蔵尊に菅笠を被せてやり、その恩返しを受けるというものであり、正しい行いをする者は救われるという仏教思想が込められている。地域により若干の違いがあるが、この地には次のように伝えられている。
昔、不作で米が実らず人々は苦しんでいた。大みそかの日、お爺さんはお婆さんの編んだ笠を売り、せめておいしいものを買って帰ろうと町に出かけたが、町の人々もお金がなく、一つも売れなかった。
お爺さんはがっかりして帰る途中、村の外れまで来ると雪が降り出した。ふと見ると道端に六体のお地蔵さんが並んで立っており、とても寒そうだった。
お爺さんは可愛そうに思い、笠を一人一人のお地蔵さんに被せてあげた。しかしお爺さんが持っていた傘は五人分しかなく、一人分はお爺さんの頬被りを外してお地蔵さんに被せて家に帰った。お爺さんがお婆さんにこのことを話すと、お婆さんはお爺さんに「良いことをしましたね」と言って、大層喜んでくれた。
お婆さんは何もない中、粗末な夕食をつくり二人で食べていると、ザックザックと、雪を踏む音がして、家の外で何か重たい物が落ちたような音がした。そこで戸を開けて外の様子を伺うと、家の前には米俵やモチ、野菜、魚などの様々な食べ物や、小判などの財宝が山と積まれていた。
お爺さんとお婆さんは驚いて外に出てみると、手ぬぐいをかぶった一体のお地蔵さんと、笠をかぶった五体のお地蔵さんが去っていくところだった。このお地蔵さんからの贈り物のおかげで、老夫婦は良い年を迎えることができたという。
関連動画: