岩手県一関市厳美町字南滝ノ上

震災前取材

 

一関の厳美渓は、栗駒山を原流とする磐井川の中流にあり、国の名勝天然記念物に指定され、日本百景にも数えられている。
厳美渓を形成する岩石は、今から約900万年前の須川岳爆発初期に噴出した凝灰岩が、堆積当時の高温と自重の圧力のために二次的に変質して生じた、石英安山岩質溶結凝灰岩である。
両岸には巨大な岩がそそり立ち、白い岩に青い水流が様々な造形をほどこしている。川床の岩盤には、窪みの中で砂や小石が水流の勢いに乗って回転し、徐々に周囲や下方をえぐり取り、ドリルで穴をあけたような釜や穴が多くある。これは甌穴(おうけつ)と呼ばれ、天然記念物に指定されている。
仙台藩主伊達政宗は、「松島と厳美がわが領地の二大景勝地なり」と自慢していたといい、度々この地を訪れ、四季により色調がかわる両岸の岩と渓谷の織りなす自然美を堪能したといわれている。また、公園内に茶室を作り桜を植えるなど、この景観を愛した。この桜は「貞山桜」と呼ばれ公園内に今でもある。

訪れる観光客は年間70万人以上と言われ、季節に応じて変化する景観美は、今も見る者の目を楽しませている。