宮城県名取市愛島笠島字上北沢…智福院

 

名取市愛島笠島に山号を蟹王山とする智福院がある。全国でも珍しい蟹を祀る寺で、蟹の像が寺宝として大切に保存されている。ここには約500年前から蟹にまつわる伝説が伝わる。

昔、この智福院のそばに大きな農家があり、そこに気立ての優しい召使の少女がいた。少女は近くの萩の倉池というきれいな泉で毎日米を洗っていたが、米を洗うたびに、その泉に住む蟹に、少しずつ米粒を与えていた。蟹はこの少女に慣れ、時刻になると必ず水際に現れていた。

ある日この少女が、昼食時に田草取りの人々に握り飯を届けようと田圃道を歩き、葉舞場橋にさしかかったところ、一人の美少年が少女の前に立ちふさがった。この美少年は、少女の方に手を差し伸べてきた。少女はこうしたことには全くうぶだったため、かぶった笠をとられたまま逃げ出し、田草採りをしている人たちのところへ急いだ。

帰り道、同じ道を通ると、美少年にとられた笠が道の辺に落ちていた。これを拾い上げようとすると、おそろしや、大きい蛇がとぐろを巻いているではないか。おどろいて笠を放り出して、一目散に走って逃げたが、この大蛇は執念深く後から追いかけてくる。

追いつかれそうになった少女は、近くにあった智福院に逃げ込み、寺の経びつの中に身を隠した。経びつの中で息をころし様子を伺っていると、大蛇は経びつの近くにとぐろを巻いているようだった。少女は生きた心地がしなかった。

しばらくすると、がさがさという音がし始め、大蛇ののたうつ音が聞こえ始めた。少女は恐る々隙間から外を見ると、どこからあらわれたのか、数十匹の蟹がその蛇をずたずたに切りさいていた。少女は難をまぬがれ、これは蟹の恩返しとして今に伝えられている。

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