宮城県大和町落合三ヶ内名子沢

 

別名:浪打薬師

昔、この穴薬師一帯は湖沼地帯で、太平洋の海水が入り込んでいたと云い、そのため、この薬師は「浪打薬師」とも云われている。

この薬師には、次のような伝説が伝えられる。

昔、この地の里人の多くは、ささやかな漁をいとなみ生業としていた。この里には親孝行な若者が居て、病気の父親と二人で、その日暮らしの貧しい生活をおくっていた。

ある寒い冬の日、若者がいつものように漁に出掛けたが、その日はどうしたことか一匹の魚も獲れなかった。家では病気の父親が帰りを待っていると思うと、若者は途方にくれるばかりだった。

仕方なく帰り支度を始めたところ、夕暮れの沖合いにピカッと光るものが見えた。急いで小舟を引き返し、恐る恐る近づいて見ると、それは一個の大きな貝だった。若者はそれを手にすると、急いで家に帰り、家で病に伏せっている父親に食べさせようとした。しかしその貝は、堅く閉ざしてなんとしても開けることができなかった。

思案のあまり、里に住む行者に尋ねたところ、この貝は、仏様が若者の日ごろの孝養心をほめ、下されたもので、七日七夜の行を施してやると言う。行者は一心に経を念じたところ、満願の夜、堅く閉じていた貝の蓋は開き、中から黄金燦然と輝く仏像が現れた。そして、不治の病と思われていた父親の病気が次第に良くなっていった。

この仏像こそ薬師如来で、里人達が病気や心配事で願をかけるとその霊験はあらたかであることが近隣に知られるようになった。このことにより、里人達は、石窟を掘り、薬師如来像を岩に刻み、崇敬したと伝えられる。

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