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宮城県色麻町高根字若林内…馬櫪神社境内

震災前取材

色麻町高根の馬櫪(ばれき)神社の境内、参道脇にお婆さんの石像がある。このお婆さん は、かつて実在した人物で、「佐々木はな」と伝えられている。

はなは、嘉永2年(1849)、岩手県の花巻に生まれ、折からの凶作で食べ物に困り、一族とともに高根に引っ越してきた。 この地に根を下ろし、はなの父親は人柄もよく、知恵も人に優れていたため、高根村の組頭を務めるようになった。

その後、はなは、村の資産家に嫁ぎ、多くの子宝にも恵まれ、たくさんの孫たちに囲まれるようにな った。そんなある日、外で遊んでいた孫たちの中に、手首が痛いと急に泣き叫ぶ子がいた。近くに見てもらう医者もなく、はな婆さんは、しかたなくその子の手を取って伸ばしているうちに「コキッ」と音がして、たちまちに治ったと云う。

当時は、子どもたちの遊びも乱暴で、脱臼や骨折も多かった。 このような子どもたちが親に連れられて来るようになり、はな婆さんは最初は、仕方なく治してあげているうちに、自然にコツが身に付き、はな婆さんは「引き違い(脱臼)」を治す力を神様に伝授されたという評判が広まり、大人たちも、はなさんを訪れるようにな った。

はな婆さんは、医学を学んだわけでもなく、治っても、治療費などは一切受け取らなかった。

このはな婆さんの話は、村人達に代々話し継がれ、村の有志たちは、世のため、人のために尽くしたはな婆さんの功績をたたえ 、昭和天皇のご成婚の折りに浄財の寄進を受けて、その石像を建立したと云う。