岩手県花巻市上小舟渡

震災前取材

 

この「イギリス海岸」は、猿ヶ石川と北上川が合流する地点の西側になり、水が引いた状態だと、白い泥岩が露出し、宮沢賢治はそこから、白い断崖のドーバー海峡を連想したようで、「イギリス海岸」と名付けた。

賢治は、この地を好んで訪れ、思い立つと夜中でも訪れたという。夏の夜空に南北に流れる天の川と、地上を流れる北上川の間を、小さくて頼りない軽便鉄道が橋を渡って行くのを見て、そんな光景から、不思議な名作「銀河鉄道の夜」が生まれたという。

宮沢賢治にとっては、この地は「異界」を感じるイーハトーブの入口で、農学校の生徒達と遊び、亡き妹のトシと交信し、時を越え恐竜時代に跳躍し、見えないものにも触れられる場所だったようだ。