岩手県北上市立花

2014/05/10取材

 

この地の巨岩は、「ジジ岩・ババ岩」と呼ばれ、次のような伝説が伝えられている。

昔、この立花の地に、とても仲の良いお爺さんとお婆さんが住んでいた。ある年の梅雨の時期に、突然降ってきた雨を避けるため、お爺さんとお婆さんは、雨宿りのため近くの大きなサイカチの木の根元にいくと、赤ん坊が泣いていた。子供のなかった二人は、これは神様からの授かりものとして、わが子として大切に育てる事にした。赤ん坊は喜助と名付けられ、やがて十年の年月が流れた。喜助は立派に育ち、働き者で親孝行な男の子に育った。

ところが、この年は何ヶ月も雨が降らず、あちこちの井戸や池が干上がってしまった。飲み水にすら困るようになってしまったが、村人たちは神様に祈ることしかできなかった。

そんなある夜、喜助はお爺さんとお婆さんに「私は本当は天に住む竜の子です。十年間修業のため人間の世界に降りてきましたが、お爺さんとお婆さんの恩に報いるためにも、今こそ天に戻って雨を降らせねばなりません」と泣く泣く打ち明けた。

喜助が外に出て天を仰ぐと、黒雲が舞い降り、ごうごうと風が吹き始め、喜助は竜に姿を変え天に戻っていった。お爺さんとお婆さんは、喜助を追いかけ、とうとうこの和賀川と北上川の合流している地までやってくると。大粒の雨が降り始め、それは数日の間続き、ひび割れた田畑を潤していった。

喜助をあきらめきれないお爺さんとお婆さんは、雨の降る中、空をあおぎながら何日も何日もじっとそこに座り続け、そのまま石になってしまったという。

その後、村人たちはこの岩を、じじばば岩と呼ぶようになった。