岩手県花巻市

2014/05/09取材

早池峰山は、岩手県にある標高1917mの山で、北上山地の最高峰である。ハヤチネウスユキソウやナンブトラノオなどの、この地の固有種率が非常に高く、高山植物の宝庫ともいえる。この高山植物などが生育する植物群落と、その南側の薬師岳の森林植物群落は「早池峰山および薬師岳の高山帯・森林植物群落」として国の特別天然記念物に指定されている。また、本州で唯一、アカエゾマツが自生している山であることでも知られており、「早池峰山のアカエゾマツ自生南限地」として国の天然記念物に指定されている。

山頂と麓の岳集落には早池峰神社があり、神仏習合の時代から山岳信仰が盛んな場所だった。麓の岳集落には、今も刀を手に勇壮に踊る早池峰神楽が伝えられている。

 

・早池峰山と岩手山

早池峰山と岩手山は男神で、姫神山は女神だった。岩手山と姫神山は夫婦になったが、早池峰山が姫神山に横恋慕し、姫神を騙し自分のものにしてしまった。そのため、今でも早池峰山と岩手山は姫神を巡り争い、夏に三山が同時に晴れることは決してない。早池峰と姫神が晴れれば岩手山が曇り、岩手山と姫神岳が晴れれば早池峰山はきっと曇ると云う。

 

 ・安倍貞任母の伝説

早池峰山の山中の、とても人が立ち入ることができない険しい崖の中程に安倍ヶ城という岩がある。ここには今も安倍貞任の母が住んでいると伝えられる。雨が降る夕暮れなどに、岩屋の扉に鍵をかける音が聞こえるという。里人たちはその音が聞こえると、明日は雨が降るという。

 

・安倍貞任伝説

早池峰山東側九合目に「安倍穴」という岩窟がある。安倍貞任が衣川の柵で敗れた後、早池峰山麓の妙泉寺に立て籠もった。しかしそこも破られ、その早池峰山の巌穴に三日三晩潜んでいたが、焚いた火の煙で義家方に所在が知られ討たれたと伝えられる。