2010/05/07取材 福島県下郷町

 

歴史散策⇒小野観音堂

「塔のへつり」を堪能し、周辺部を探索し終えて、国道118号線を北上し、山内宿方面に向かった。途中県道を西に折れると山内宿なのだが、この県道との分岐点の近くに小野観音堂がある。

この下郷の地には、以仁王の伝説や朝日長者の伝説などが今に残っており、興味深い地であり、この小野観音堂には朝日長者の伝説がいきいきと伝えられている。

湯野上温泉駅を過ぎるとじきに県道329号線が分岐する。その県道を西に曲がると、すぐ右手に小野観音堂へ続く急坂があり、そのまま進むと小野観音堂があった。

現在の堂宇は江戸後期に建てられ、小野岳山頂に祀られていた観世音菩薩をここに移したと云う。小野岳を背景とした堂は、観音堂らしい端正なつくりで、小野岳の山容とあいまって、この堂宇だけでは完結しない奥深い印象をあたえる。

小野岳の山頂には古い堂の名残があるといい、また朝日長者の屋敷もあったと伝えられており山頂まで登ってみるつもりだった。例によって行き当たりばったりの性格から、下調べもしてはおらず、屋敷跡があるのならば里山程度の山と考えていた。しかし観音堂から見る小野岳は、本格的な南会津の山塊で、気軽に、ことのついでに登れるような山ではなかった。

しかしどうにも納得がいかない。朝日長者は、この山頂にどのようにして屋敷を建てたのか、どのようにして里と行き来をしたのか、などとつい考えてしまったが、時代は役行者が空を飛ぶ伝説の時代である。朝日長者が雲に乗り山頂と里を行き来したと考えることもできる。ここから眺める小野岳のたたずまいと湯野上の方向に開ける眺望は、何とはなしにその伝説を納得させてくれるものだった。