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宮城県名取市高舘川上字五性寺

高舘川上の、県道118号線沿いに、向き合うように「幾世塚」と「小佐治塚」がある。このふたつの 塚には、次のような悲しい恋の話が伝えられている。

むかし、高舘の地に桑島長者という富豪が いた。しかし長者夫婦の間には子供がなかなかできなかった。夫婦は高舘山の観音さまに、子供を授かるように祈願したところ、玉のような女の子が生まれた。

長者夫婦はたいそう喜び、高舘山に「懸け仏」をたくさん寄進し、生まれた女の子には幾世(いくよ)姫と 名付け、大層に可愛がって育てた。幾世姫は長じるにつれ美しくなっていった。

そんなある日、旅の若者が長者に一夜の宿 を求めた。長者は快くこの求めに応じて若者を家に泊めた。ちょうどその晩、盗賊が長者の家を襲い幾世姫をさらおうとした 。しかしこの若者は盗賊と勇敢に戦い、盗賊を追い払った。

長者はこの若者に感謝し、いろいろ訪ねると、都の高貴な生まれで雄幸丸(おさちまる)という名前とわかり、この家に留めおかれる内に幾世姫と恋仲になった。しばらくの滞在の後、雄幸丸は再会を約し、再び旅に出ていった。

幾世姫は、何年も何年も雄幸丸を待ち続けていたが、ある日待ちきれなくなり、青熊川(増田川)に身を投げて死んでしまった。しばらくして雄幸丸が戻ってきてこのことを知り、大層嘆き、その晩に雄幸丸も自害してしまった。

長者はこれを深く悲しみ、幾世塚と雄幸塚をむかい合わせに築き、高舘山のふもとに寺を作り冥福を祈った と云う。