宮城県栗原市の鶯沢には、伊達政宗の時代には銀山として採掘されていた細倉鉱山があった。細倉鉱山は、戦前戦後を通じて、日本を代表する鉛、亜鉛の鉱山だった。
佐野住宅は、1930年代に鉱山の役員住宅として建てられ使用されていたが、1970年代以降、円高による競争力の低下やオイルショックなどによる不況の影響で、細倉鉱山は昭和62年(1987)に閉山となり、この佐野住宅は放置されていた。
その後、解体する話が出ていたが、平成16年(2007)公開された映画「東京タワー」のロケで使用され、その後観光地として保存されていた。佐野住宅は、雑貨店なども含めた、地域全体が保存されていたことで、それは昭和初期の生活空間そのものだった。
しかし、この地は、平成17年(2008)の岩手内陸地震では震度6強、そして平成23年(2011)の東日本大震災では震度7を記録し、これらの建物は倒壊こそ免れたが、被害は大きかった。
このため、観光客の安全が確保できないとして、一般公開は中止となり、平成25年(2013)12月、ついに解体され、なつかしい風景が一つ消滅した。