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青森県弘前市新町(竜泉寺境内)

2013/08/20取材


この竜泉寺の境内に、地蔵堂があり、中には「身代わり地蔵」が祀られている。

むかし、弘前の紺屋町に敦賀屋という屋号のお百姓が住んでいた。この敦賀屋は信心深く、お地蔵様をたいそう信心していた。

ある年のこと、まったく雨が降らず、田植えをしようにも水がなく、ほんのわずかな水は上流の田んぼにとられて、下流の田んぼまでは行きわたらなかった。そのため敦賀屋は意を決してある晩、闇夜にまぎれて上流のほうに行ってみた。すると探し回るまでもなく、水口がせき止められているのを見つけた。

これもお地蔵様のおかげだと心の中でつぶやき、さっそく水口を壊そうとしたところ、不意に男が出てきて「この水泥棒め!」と敦賀屋に殴りかかってきた。敦賀屋も負けじと「おめぇも水泥棒でねぇか!」と叫んだ。

すると男は頭に血が上り、「へりくついうんでねぇ!」と言うやいなや、もっていた鍬で敦賀屋の頭を叩き割った。敦賀屋はそのまま倒れて死んでしまった。男は怖くなって慌てて逃げてしまった。

それからどれくらいの時間がたったことか、死んだはずの敦賀屋が目を覚ました。敦賀屋は、頭に手をやってみたが、頭は切れてもいなければ、こぶもできてはいなかった。敦賀屋は不思議に思いながら家に戻り、いつものようにお地蔵様に手を合わせた。

するとお地蔵様の様子がいつもと違う感じがして、よくよく見ると、お地蔵様の頭に鍬で打ちつけた痕が残っていた。敦賀屋びっくりして、「おらの身代わりになってくれたんだべ、ありがたや」と言って、今まで以上にお地蔵様を深く信心するようになった。
敦賀屋は、皆が広くこのお地蔵様を信心するように竜泉寺におさめたと云う。今でも毎年6月23日には、この身代わり地蔵の宵宮がおこなわれると云う。