韓国が、これまでの左派政権から右派政権に代わった。金正恩は韓国が左派政権のうちに政治的に吸収し、韓国経済を一気に国有化しようとしたが、韓国左派政権が朝鮮半島からアメリカを撤退させることができず、その政権も見込んでいた10年がその半分の5年間で右派政権にとって代わられた。

ヨーロッパでは、ウクライナ戦争が勃発し、アメリカの関心はロシアに移った。短距離ミサイルを撃ってみてもアメリカの反応は薄く、韓国の反応も極めて鈍い。北朝鮮内には、長い経済制裁と、蔓延する飢餓と感染症で、不穏なものも漂っていた。

しかし、ウクライナ戦争では、ロシアは弾薬や兵器不足で、北朝鮮にそれを求め、北朝鮮は食料や原油、そして核兵器や潜水艦の技術の提供を求め、秘密裏にそれらは実行された。

新しい潜水艦は、潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)を搭載できるよう意図し、2023年9月進水したが、実際には技術不足で、張り子の虎といえるものだったが、それでもロシアの技術を導入して20XX年冬に完成、金正恩は、この潜水艦をグアム周辺に出撃させ、中距離ミサイルの発射実験を行った。

その2ヶ月後、中国は中朝国境沿いに人民解放軍の大軍を展開させた。中国も国際世論からの孤立を恐れ、また、ウクライナ戦争での北朝鮮のロシアへの接近を懸念してのもので、国際的な経済制裁を受けているロシアのこの軍の展開は、国境線からの物資の流出、流入を防ぐための経済封鎖が表向きの理由だった。

アメリカはこの時期、すでに北朝鮮への対応は決めていた。アメリカへの直接的な攻撃が懸念される核実験あるいは長距離弾道弾の発射があれば、ただちに金正恩を除去し、北朝鮮の体制を変換させる計画を立てていた。

北朝鮮のこのグアム周辺でのミサイル発射実験の2か月後、アメリカは直ちに金正恩除去作戦を発動した。アメリカは、北朝鮮内の秘密組織とはかり、金正恩の動静を探っていた。もちろん人工衛星や無人機なども総動員して、同時に移動式ミサイルの動静も探っていた。そしてその年の3月、ついに金正恩の動静を複数の情報源からキャッチした。数人の取り巻きとともに、内輪でパーティーを開く予定だという。

アメリカの行動は素早かった。東シナ海に強襲揚陸艦ボノムリシャールを中心とした艦隊をソウル西側の仁川沖に、空母ロナルドレーガンを中心にした艦隊は、半島北東部の元山に向けて急行した。

その日の夜、仁川沖のアメリカ艦隊から、金正恩がパーティーを催しているとされる平壌郊外の別荘に向けて、巡航ミサイルが次々と発射された。また、それと同時にボノムリシャールからは、アメリカの特殊部隊を乗せたオスプレイが飛び立った。

これに先立つ1か月ほど前、アメリカ大統領は、秘密裏に国務長官を特使として中国に派遣した。国務長官は、アメリカは「これ以上の北朝鮮の核ミサイルによる脅しを容認しない」とし、以下のようなアメリカの方針を中国に伝えた。

「アメリカは、北朝鮮の指導部を根絶するため、斬首作戦と平壌制圧作戦を発動する」
「これは、空軍部隊と特殊部隊による部分的なものとし、陸上部隊による全面侵攻を意味するものではない」
「ただし、ミサイルの発射の兆候や、潜水艦の出撃、北朝鮮軍の38度線以南への侵攻がある場合は、あらゆる手段で殲滅する」
「北の体制が崩壊後は速やかに国連の査察団を送り、核施設、核兵器を無力化、廃絶する」

これは、中国に対するアメリカの通告として行われた。そして中国がこれを黙認すれば、アメリカは韓国内のサードを撤去し、それ以降の北の新たな体制については、中国の指導のもとに進めることを黙認することを伝えた。

中国にとって悪い話ではなかった。しかし問題もあった。北朝鮮の核開発は、かつての瀋陽軍区が支援していたものであり、瀋陽軍は必ずしも北京のコントロールのもとにあるわけではなかった。瀋陽軍は北京に対して含むところもあるようで、これをきっかけに暴発する恐れもあった。習近平は結局このアメリカの通告に対して賛意を表することもなかったが、否定することもしなかった。