中国は、南シナ海に一方的に10段線なる線を引き、その線内を自国の核心的利益とし、自国領土と主張している。もちろんそのようなことが国際的に認められるはずもなく、国際仲裁裁判所は、フィリピン政府の提訴を受けて、2016年、中国側の領有権主張を認めない判決を出した。 にもかかわらず、中国は南シナ海各所のサンゴ礁を埋め立て、滑走路を築き、ミサイルやレーダー、戦闘機を配備し軍事基地化しており、フィリピンのスプラトリー諸島周辺には、200隻を超える漁船を海上に居座らせ、またフィリピン政府がこの海域の実効支配のために古い軍艦シエラマドレ号を意図的に座礁させ、守備隊を置いているが、武装した海警船でフィリピンの補給船を威嚇し、衝突させ補給を妨害している。 スプラトリー諸島周辺は、戦前は日本が統治していたが、1952年のサンフランシスコ講和条約により、日本は領有権請求権を放棄した。しかしこの際に、国際社会は、この地域の具体的な帰属先については明言しなかった為、これ以降の時代においては中華人民共和国やベトナムをはじめ、近隣諸国の間で領有権争いが巻き起こる事態となっている。 この地の領有を一方的に主張し、軍事基地を建設している中国に対して、米軍は偵察機を飛ばし、また自由航行作戦などを実施しているが、それに対し、中国は、「非常に無責任で危険な行為。地域の平和と安定を損ねる」と非難している。「盗人たけだけしい」とはこういうことを言うのだろう。 1988年、スプラトリー諸島のジョンソン南礁において、中国人民解放軍海軍とベトナム人民海軍が衝突し、この地の領有をめぐって、ベトナム軍と対峙した。いわゆるスプラトリー海戦である。しかしそれは海戦と言えるものではなく、殆ど無防備のベトナム軍に対しての、一方的な「虐殺」だった。 中国海軍は、駆逐艦と海兵隊など多数をスプラトリー諸島に派遣した。ベトナム軍は、輸送艦と、海軍50人がジョンソン南礁を守っていた。ベトナム軍の決意は固く、防御する物が何もない浅瀬に腰まで海水につかり、3旗の国旗を翻らせ、必死の抵抗を行った。結局中国軍は、35ミリ対空機関砲で、浅瀬に身をさらしているベトナム海軍と工兵を掃射し、100ミリ砲で輸送艦を撃沈した。ベトナム軍の64名が犠牲になり、遺体は3体だけが見つかっただけだった。これは「海戦」などではない。まさに「虐殺」だった。 その後、ジョンソン南礁には中国軍が軍事基地を建設、現在は飛行場も建設されている。 —– かつては、中国の与太話と思われていた第一列島線内の領有化、アメリカと太平洋を分割しようという第二列島線は、中国は本気で考えているようで、11月16日の米中首脳会談でも、習近平は太平洋の米中二分割を口にしている。そしてそれは、戦後秩序を武力で破壊しようとするものだ。もちろん日本の左翼が好きな「環境破壊やサンゴ礁への悪影響」など全く考えているはずもない。 日本は、尖閣諸島にも沖縄にも、このような悪辣な勢力が身近に迫ってきているのだ。