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山形県真室川町釜渕

 

別名:化物石、十字石

真室川町の釜淵に、お化け石、あるいは化物石、十字石と呼ばれている石がある。この石には、切支丹にまつわる次のような伝説が伝えらる。

寛永2年(1652)、幕府の激しい弾圧から逃れ、この釜渕のさらに奥の金山の谷口銀山に、飯盛りとして働く「うしの」という美しい切支丹の娘がいた。金山や銀山では、その素性が問われることはまれで、そのため、罪を犯して逃げている者や切支丹たちが逃げ込んでいることが多かった。

しかしそれでも、切支丹への取調べは谷口銀山にも及び始め、おそのは身の危険を感じ山を抜け出した。しかしこの釜淵で、新庄藩の役人に捕まり切り殺されてしまった。

この地を偶然通りかかった炭焼き男が、うしのの死体を見ると、胸に十字架が下げられているのを見つけた。男は珍しいものと思いその十字架を持ち帰ったが、恐ろしくなり虚空蔵様の坂下に埋め、大きな石を置いて人目につかないようにした。

それからおよそ200年後、虚空蔵様の祭りで二人の若者が奉納の「剣の舞」を舞っていた。ところがその内の一人の舞手が、もののけに取り付かれ、突然、狂ったように踊りだした。もののけを振り払おうとするかのように踊る若者を見て、不思議に思った庄屋が驚いている見物人を見渡すと、見物人の中に、村で見かけない、青白く冷たい光を放つ怪しい姿の美しい娘を見つけた。

庄屋は、これがもののけの正体と感じ、「おのれ妖怪」と刀で切りかかった。「チャリン」という刀の音とともに娘はパッと消え、ウシノの十字架が埋められていた大石は十字に裂け、狂ったように踊っていた舞い手の若者はその大石の前で呆然と立ち尽くしていた。

村人はこの不思議な出来事以来、この石を「お化け石」と呼ぶようになった。また、刀で石に十字の形に傷ついたことから「十字石」とも呼ばれている。