岩手県八幡平市松尾寄木

2017/05/13取材

 

岩手山の北側、焼走り熔岩流の約4kmの位置にこの一本桜がある。種類は野生種のカスミザクラで、花柄に短い毛が生えているためにケヤマザクラなどとも呼ばれる。命名の由来は遠くから見たこの樹の様子が霞のように見えることからきていると云う。緑の牧野に雄大な岩手山を背景に凛と立つその様は、この地の春の喜びを象徴的に表している風景になっている。

岩手山は古くから信仰の対象であり、この地は、北の遥拝所としての新山堂があった地の近くであり、また北からの登山道の寄木口にあたる。

岩手山は、今から約70万年前にできたと考えられており、今までに何度も噴火をくり返しており、縄文時代(1万2000~2000年前)ごろから、東側と西側の2つにわかれて噴火するようになった。記録に残る岩手山の一番古い噴火は、貞享3年(1686)の大噴火で、その後の享保17年(1732)の噴火ではたくさんの溶岩が流れ出て「焼走り溶岩流」ができたといわれており、この地には火山灰が降り積もった。

現在は一面の牧野になっており、のどかな光景が広がっている。