福島県本宮市和田東屋口

2012/11/01取材

 

標高337mの岩角山(いわづのさん)は、全山花崗岩で形成され、山中のいたる所に露出した花崗岩の巨石や奇岩には、線刻された西国三十三観世音や菩薩など、800余躰が描かれている。

山頂からの眺望は素晴らしく、那須連邦や安達太良山、吾妻の山々を見渡すことができる。全山が名勝天然記念物に指定されており、毎年1月3日には近郷近在の参詣人らが梵天を奪い合う、大梵天祭が勇壮に行われる。

岩角山は、伊達市の霊山などと同じ頃の仁寿元年(851)、慈覚大師によって開かれたといわれ、天台密教の道場として栄えたと伝えられる。

藩政期には、二本松藩主丹羽氏は、岩角山を唯一つの祈願寺とし、丹羽光重は、岩角寺住職の豪伝和尚とともに、西国三十三観世音の霊場から分霊を勧請した。岩角山の全体に点在する線で彫られた像は、西国霊場33ヶ所の観世音のほか菩薩、天王、天神など、約808体を数える。像には、石工や奉納した信者の名前とされるものが刻まれ、かなり険しい場所にも彫られ、人々の信仰の厚さが推し量られる。