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山形県西川町岩根沢

2015/11/13取材

この沼には、次のような伝説が伝えられている。

昔、ある沼の主だった龍が、村に住む一人娘をさらった。元武士だった老いた父親は怒り、娘を救わんと沼深く潜り斬りこみ、一太刀を浴びせたが逃がしてしまった。

そこで父親は栗の木の皮を剥ぎ、沼いっぱいに投げ込むと、沼の水は栗渋で真っ黒になった。龍はこの渋攻めに耐え切れず、牛首に変身し、大空を目指し飛び去った。

しかし悪事をはたらいた龍は、神々に咎められ、行く先々を厚い雲で覆われてしまい、あてどもなく大空をさまよった。

龍は飛ぶ力もなくなり、気力も失い始める中で、これまでの罪を悔いた。すると雲のわずかな切れ目から、神々の慈悲の、青々としたこの龍神沼が見えた。

龍はこの龍神沼に舞い降り、沼の主となり、その後は心を改め、干ばつには雨を、長雨には晴天をもたらし、世のために尽くした。

人々はこの沼の主を、稲作、養蚕の守り神として崇めるようになり、文政13年(1830)、この地に龍王神社が祀られた。