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山形県南陽市赤湯

震災前取材

 

白龍湖は、国道13号線を南に下り、山形方面から赤湯の市街地に入る手前に広がる水田の中にある。ヘラブナ釣りの絶好の場所として、また、ハンググライダーの目標として利用されています。周囲の植物群落は県の天然記念物の指定を受けています。

 

・白龍湖の伝説

昔、とある村に、おそのという美しい娘がいた。ある日、旅の商人がやってきて、「娘さんを、越後のわたしの家の息子の嫁にしたいのだが」と父親に話した。父親は承諾したものの、おそのはまだ若いため、年頃になったら、越後へ連れて行ってもらうということになった。

おその家は貧しく、これを聞いたおそのは、「今越後へ行って、嫁になるまで働かせてもらい、そうすればおそのの家の食いぶちも減る」と考え、次の朝、この商人のあとを追って越後へ向かった。

しかしおそのは、途中この商人を見失ってしまい、赤湯のとある百姓の家へやってきた。家の人は不思議がり、おそのの話を聞いて、「その男は、うまいことを言って若い娘を連れ出し、人買いに売り飛ばす悪いヤツだ。信用しちゃいかんぞ。」と忠告してくれた。しかしおそのは、もはや家へ帰る体力もなく、そこで、しばらくの間、赤湯の湯宿で働くことになった。

このころ、赤湯の近くの山で金や銀、銅などが見つかり、米沢の役人がよくやって来ていた。その中の一人の若侍が、ときおり山を下りて湯につかっていたが、この若侍はおそのを見初め、二人は恋に落ちた。

このことが若侍の母親の耳に入り、母親は身分の違いを息子に言い聞かせたが、若侍はまったく聞く耳を持たなかった。母親は、おそのの元を訪れ、「二人は身分が違う。このままでは二人とも不幸になってしまう。心を鬼にして別れてほしい」と頼み込んだ。心優しいおそのは、別れる決心をして、泣く泣く別れの手紙を書いた。

若侍はおどろき、おそのに訳を問い詰めたが、おそのはじっと顔を伏せたまま何も話さなかった。若侍は、おそのが別の男を好きになったのかと疑い、怒りにまかせ刀を抜いた。おどろいたおそのは逃げたが、この沼のところで追いつかれ、動転した若侍により斬り殺されてしまった。

その晩、むくむくと黒雲が湧き起こり、雨が降り出した。赤湯ではこの時期日照りが続き、雨乞いの祈祷も行われていたが、その功はなかった。このため、この雨を村人達は「恵の雨」と喜んだが、幾日も幾日も降り続き、止む様子が無く、やがて沼の水が溢れ出し、村人達はおおいに慌てふためいた。

その内、誰言うとも無く、「稲妻の中に、赤い着物を咥えた白い龍が天に昇るのを見た」という者があらわれ、「あれはきっと殺されたおそのだ」と噂された。

沼は、日一日と広がっていき、ようやく雨がやんだが、沼は大きくなったまま、もとにもどることはなかった。その後、この沼は白龍湖と呼ばれるようになった。