山形県鶴岡市温海乙

震災前取材

国道7号線を南下すると、温海の町に入る手前に巨大な岩が海に突き出し屹立している。これが立岩で、高さ50mあまりの巨岩で、頂上には松の木が自生している。
ここはマルバシャリンバイの自生地で昭和31年(1956)、県の天然記念物に指定された。マルバシャリンバイはバラ科に属する暖地性の常緑低木で、花は白く五弁で梅の花によく似ている。日本中部以南の海岸に自生するが、日本海海岸では暮坪の立岩がその北限となっていると云う。
この地を訪れた古川小松軒は天明8年(1788)に著した「東遊雑記」にこの立岩について次のように記している。
暮坪村というあり。この海上に世に名高き鉾立岩と称するあり。高さ18丈鉾を立てたる如し。小松少々生ぜり。麓に岩石の平らな所あり。藁葺の小祠ありて矢除明神と称す。実に海内の奇石というべし。