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山形県大蔵村赤松

震災前取材

 

銅山川が最上川に注ぎ込む辺りは断崖になっており、この地 を「要」として北東に山が扇のように広がっている。この崖の上に形の良い老松が茂っていた。このため、最上川を行き来する船頭たちは、この地を「要の松」と呼び習わした。

崖の下は深い淵になっており、この淵には古くから途方もない大きな緋鯉が住んでいると伝えられている。

ある年、この地のおばあさんが、いつものように、川向いの田んぼに行こうとして舟に乗りこの淵にさしかかったところ、川底に真赤な帯のようなものがひらひらと流れているのを見つけた。この帯は不思議にも金色の光を放っていた。おばあさんは驚き、舟の中の他の人にも見せようと大声で叫んだが、他の人には何も見えず、そのまま消えてしまったと云う。

またある年、清水村の八幡様の祭りの夜、一人の美しい娘が踊りの輪に加わっていた。見馴れない娘なので、踊りが終わってから、村の若者がその跡をつけてみると、要の松のあたりで急に消えてしまったという。この娘は、要の松の淵の主に違いないと、当時大変な評判になった。