宮城県大和町吉田字悪田西

 

この南川ダムの地には、かつて蛇石と呼ばれる石があったと伝えられる。この石は、現在はダムの湖底に沈み、その伝説だけが伝えられている。

この地の近く、玉ヶ池のところに長者屋敷があった。この家には笛の上手な息子がいた。

ある月のきれいな晩、長者の息子は玉ヶ池の近くで笛を吹き始めた。すると、若い美しい娘がどこからともなくやってきて、それからというもの、二人は毎晩玉ヶ池で笛を楽しんでいた。そのうちに二人は恋仲になり、やがて一緒に暮らすようになった。

しばらくすると、娘は子を宿し、いよいよ赤子が生まれるとき、娘は男に「どんなことがあっても、ふすまは開けないで」と言い置き、産室に入った。ふすまを閉めてしばらくたつと、家がかたかた動きだし、そのうち地震のように揺れだした。男はびっくりして心配し、娘との約束を忘れてふすまを開けた。するとそこには大蛇がお産の苦しみでのたうちまわっていた。

お産が終わり、娘は赤子を抱いて男の前にあらわれ、涙ながらに「見られたからにはもう一緒にくらすことはできない」と言い、赤子を男に渡し、自分の左眼を取り出し、「赤子が泣き出したら、これをなめさせてやって」と言い、泣きながら七ツ森の林のほうに消えていった。

赤子は海辺の親戚に預けられ、すくすくと立派な若者に育ち、海へ出て漁をするようになった。ある日のこと漁に出ると、仕事に夢中になっている間に、いつのまにか空模様が変わり海が荒れてきた。次第に波風が強くなり、ついには壁のような大きな波が押し寄せ、戻ることが出来なくなった。思わず若者は、「おっかぁーーーーー」と叫んだ。今まで一度も見たことがない母親を呼んだ。すると沖から大蛇がやってきて、若者がのっている舟を陸まで引っ張り、そのまま去っていってしまった。

若者は、母親にもう一度会いたいと思い、生まれ故郷の七ツ森へ来た。しかしどこを探しても母親の大蛇はみつからず、川に降り四十八滝の方を探していると、川沿いに年老いた大蛇がいた。顔を見ると左目がなかった。若者は、この大蛇が母親に違いないと思い、「おっかあ」と呼ぶと、大蛇は右目を静かに開けて若者を見ると、静かにその右目を閉じて、もう二度と開くことがなかった。そして大蛇の体はだんだん硬くなり、蛇石になったと云う。

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