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宮城県南三陸町入谷字山の神平

震災前取材

この巨石のある南三陸町入谷地区の山は、神行堂山と言い、別名を高野山と言う。むかし弘法大師が寺を開こうとしたが果たせずに立ち去った地と言われている。

この花崗岩の巨石には、大きな三つの縦に走った亀裂があり、この亀裂は、善人は通れるが悪人は通れないという言い伝えがあり、成人に達した男女が社会人の仲間入りをするときに、この亀裂をくぐり抜けなければならなかったと言う。

また、この巨石には次のような伝説が伝わる。

昔、この山には大蛇が棲み、人々に害をなすことはなはだしかった。麓の里を荒らし、困り果てた人々が高野山に願掛けをして、手に手に得物を持ち退治に乗り出した。するとにわかに嵐となり、暗雲のなかから大蛇が現れた。人々は鍬や鎌を振り上げて大蛇を取り囲み、巨石のところに追い詰めたが、大蛇は巨石の上で鎌首をもたげ人々を睨み付けていた。

しばらく睨み合いが続いたが、不意にまばゆい閃光が走り轟音とともに雷が大石に落ちた。人々がおそるおそる顔を上げてみると、大蛇は岩もろともふたつに裂けて死んでいた。

以後、人々はこの裂けた巨石を御神体として高野山大権現を祀り、毎年祭祀を欠かさなかったという。