宮城県登米市米山町桜丘貝待井

 

平筒(びょうどう)沼周囲は、公園として整備され、約2.8kmの遊歩道沿いには、約600本も桜が植えられている。また、ブナの自然公園や白鳥などの野鳥の観察地としても有名で、四季折々の風情が楽しめる。

この沼には次のような伝説が伝えられている。

 

・蛇になった女

昔この地に、浜から二人の女が商いにやって来た。沼のほとりで休んでいると、たくさんの魚が寄り集まっていた。二人はこれは珍しいとその魚を捕り、焚き火で焼いて食べてみると非常にうまい。1匹、また1匹と食は進み、とうとう2人でたいらげてしまった。

さて出発しようかという時になり、急に一方の女が水を飲みたいと言い、沼へ引き返し水を飲むとその水がまたおいしい。女は口をいっぱいにあけてガブガブと飲んだ。ところがまた出発しようとするとまたすぐに喉が乾く。何度かそれを繰り返しているうちに、腹がどんどん膨らんできた。それでも喉の渇きはますます大きくなるばかりで、女はとうとう沼の中へ入ってまでも水を飲み続けた。女は沼の中からもう1人の女に「私はもう家へ帰れない。このまま沼の主になってしまうかもしれない。このことを家に伝えてくれ」と言い、ズブズブと沼の底へ沈んでいってしまった。

一緒にいた女はビックリして大急ぎで浜に帰り、一部始終をその女の夫に話した。夫もまた驚き、妻が常にかわいがっていた葦毛の馬に子供を乗せて沼へ向かった。沼へ着くと夫は2回、3回妻の名を呼んだ。すると、沼の中から妻が浮かびあらわれた。しかしそれはまぎれもない妻ではあったが、腹の下のほうは蛇体になり、顔つきも恐ろしい形に変わりだしていた。

妻は、「よく尋ねて来てくれました。私はもう二度と、会うこともできない体となってしまい、これからはこの沼の主になります。どうぞあきらめてください。子供の行く末はきっと守りますから、あそこの森に捨て子にしてください。その馬は私がかわいがっていた馬なので、どうぞ私にください」こう言うと、妻は沼の底へ沈んでいき、葦毛の馬もズブズブと沈んでいってしまった。やがてどこからか声があり、「私の霊魂はこの島に、弁天として祀ってください」と言ったので、それからこの島は、弁天島と呼ばれるようになったという。

 

・僧と赤蛇

この沼の弁天島に、いつの頃からか一人の僧が住み着き庵を結んでいた。僧は島に生えているシキミの老木より葉を摘み取り、一葉に一字ずつ「大弁財天女功徳尊勝陀羅尼」というお経を書き、それを本尊としていた。

この僧は、常に一匹の赤色をした小蛇をかた時も離さず可愛がっていた。それは母が子を愛するようであったという。ところが、ある雨風のすさまじい夜、この僧は病で亡くなってしまった。里人達は、放ってもおけないだろうと、お通夜に4,5人集まった。夜もかなり更けた頃、死んだ僧のゆかりのものであると名のる一人の女が訪ねてきた。里人達はいぶかしく思いながらも女を中に招き入れた。

小さな一間の庵だったので、みんなの見ている前で女はこの僧の遺体に焼香し、悲しげに手を合わせていたが、突然、強風が吹き始め、静かだった沼は波が逆巻き、庵の灯は消え暗闇になった。するとこの女の姿はたちまち赤色の大蛇と変じ、僧の遺体を口にくわえて、狂瀾怒涛の平筒沼に身を投じた。

悪夢のような恐怖の一夜が明け、風波もおさまり、東の空が白みかかった頃、沼の中頃とおぼしき所から一条の竜巻が舞い上がり、その中に赤白二匹の竜が、ハスの花の飾りのついた灯籠を掲げて昇天していく姿が見えたという。

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