岩手県二戸市石切所

2012/11/05取材

馬仙峡は、馬淵川中流に位置する渓谷で、時の県知事の国分謙吉により馬淵川にある仙境という意味合いで馬仙峡と命名された。一帯はモミジ、カエデ、ブナ、ナラ、ナナカマドなどの落葉樹林になっているため、新緑、紅葉の頃は格別な美しさを見せる。

この馬仙峡の中でも一際目を引くのが、馬渕川左岸の山林の中に屹立する男神岩と女神岩であり、陸上の夫婦岩としては全国最大の規模。これらの岩には女神の悲恋の物語が伝えられている。

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この地の男神と女神は、幼い頃から仲が良く、長じてからは互いに惹かれ夫婦の約束をしていた。しかし男神は、いつしか美しい鳥越山に心を奪われるようになってしまった。女神はこの男神の心変わりを怒り、悲しみ、心は嫉妬の炎に焼かれ、大蛇に変身し鳥越山を絞め殺そうとした。しかしそれもかなわず、悲しみのあまり大淵に身を投じてしまった。里人は、祠を建て大淵大明神とし、雨乞いの神として祀り信仰した。干ばつの時に願いが聞き届けられると、水柱が噴き上がり、数日のうちに必ず雨が降ったと伝えられる。
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馬渕川右岸には大崩崖がある。地層は第三記に属する砂岩と凝灰岩からなり、川面からの高さ約160m、幅約80mと大規模で、水蝕を受けて微地形に富み、多彩な変化を馬淵川の川面に映している。二戸市内を南北に走るJRいわて銀河鉄道や国道4号からも一望できる。

この大崩崖の崖上には、九戸城攻めに初陣で参戦した会津城主蒲生氏郷の甥、氏綱の墓があると云う。氏綱は九戸城落城目前に病死したとされる。

また、男神岩の上方には展望台があり馬仙峡全体を俯瞰する雄大な景色を展望することが出来る。