岩手県大槌町赤浜二丁目

震災前取材

 

蓬莱島は、大槌湾にぽっかりと浮かぶひょうたん型の島。島のある赤浜より約400メートルの防波堤で繋がれている。島には、豊漁と航海の安全を祈願し弁財天が祀られ、赤い灯台の根元にはオットセイの供養塔が建てられている。NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルと言われている。

「ひょっこりひょうたん島」は、個性豊かなキャラクターたちがミュージカル形式で笑いと風刺、冒険の物語を繰り広げ、当時の子供たちに多大な人気を得、昭和39年(1964)4月から5年間放映される国民的人気番組となった。しかし、ひょうたん島が流れ着いた国の一つ、国民すべてが郵便局員であるというポストリアの設定が郵政を馬鹿にしているとされ放送は打ち切りになった。

この「ひょうたん島」を手がけた作家の井上ひさしは、孤児院から進学高の仙台第一高等学校へ進んだが、経済的な問題とその奔放な性格から、その進むべき道はなかなか定まらなかった。最終的に、上智大学フランス語学科に進学し、途中2年間、学費を得るために釜石の病院で働いて貯めた15万円も、その後赤線に通いつめ2ヶ月で使い果たしたと云う。

上智大学在学中に、浅草のストリップ劇場フランス座を中心に台本を書き始め、この経験が、後に放送作家として花開くことになった。上智大学卒業後、放送作家として「ひょうたん島」を手がけることになったが、その他、「吉里吉里人」もこの地に関わりがあり、釜石での生活が、作家としての井上ひさしに大きな影響を与えたとも思われる。