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青森県東北町字大浦

2013/04/25取材

昔、京の都に橘中納言道忠という貴人がいた。道忠には、玉代姫と勝世姫という二人の姫がおり、幸福に暮らしていた。

道忠は、世の無常をはかなみひっそりと旅に出た。二人の姫は神のお告げに従い、それぞれに供を連れて、父の行方を探すべく旅に出た。

姉の玉代姫は、先にこの地へたどり着いたが、沼から父の呼ぶ声がし、その声にひかれて我を忘れて沼に入り、姉沼の主になったと云う。

妹の勝世姫は、心細い旅を続け、越後の国の村上まで来たとき、父が沼崎というところで没し、沼の主となったと云ううわさを耳にし旅を急いだ。しかし、ようやく漆玉というところへたどりついたときには疲れはてて動けなくなってしまった。

見れば広々とした沼が広がっていた。勝世姫は、父道忠はこの沼の主になっているのかもしれないと考え、自分もこの沼の主になろうと決意し、沼に静かに入っていった。

ところがこの沼にはワニ鮫が住んでおり、姫をめがけて飛びかかってきた。すると姫の姿は大蛇とかわり、さらに父道忠がこつぜんと現れ、ワニ鮫に縄をかけ、漆玉のうしろにあった小さな沼に投げ入れた。

それ以来、勝世姫が沼の主となり、この沼を「妹沼」と呼ぶようになった。それが小川原湖である。この広沼大明神は、後に勝世姫を祀って建てられたものと伝えられる。

その後、二人の姫は父の居る沼崎へ行き、三尊仏になったと云う。