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秋田県大館市字中城

2013/08/19取材

 

桜櫓館は大館市、市制施行前の最後の町長を務めた桜場文蔵氏が、昭和8年(1933)、私邸として建てたもの。木造2階建てで、洋室を備えた和風住宅である。

桜庭文蔵は、土木建築、製材で成功し、マルカ大館鋼鉄を立ち上げ財をなした。戦前戦後の2度大館町長をつとめている。

建築の特徴としては、2階の屋根に突き出るように四方にガラス窓を配した展望台を作った事にある。桜場町長は『この展望台から一人眼下の町を一望しながら町政に思いを巡らせた』と云う。

建物は一間6.3尺の京間の造りで、普通の部屋より一回り広く造られている。屋根は、1階が正面入母屋造、背面切妻造、玄関は武家屋敷に見られる格式の高い「起リ破風」のついた玄関で、2階は寄棟造で、変化に富んだ外観である。

この建物には、ケヤキの大梁と長尺幅広の床板、秋田杉の長押も、継ぎ足す事なくすべて長尺が使用されている。また各部屋の付書院、部屋の障子や階段の手すりにも、繊細で高度な技術が施されている。

桜櫓館は、旧市街地が度重なる大火に見舞われながらも奇跡的に焼失を免れ、市街地では数少ない昭和初期の本格木造建築として貴重な存在。

昭和55年(1980)、大館郵便局の局舎新築に際して、建物を曳き屋して現在地に移転した。

桜櫓館の名称は城跡の桜と桜橋の桜、それと展望台の櫓を組み合わせて命名されたと云う。