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秋田県北秋田市阿仁中村

2016/04/05取材

 

この地域には、「七不思議石」の伝説が伝えられている。

 

・「マサカリ石」

むかし、中村におせんという美人で気立てのよい娘がおり、村の若者たちのあこがれだった。おせんには善作という恋人がおり、この恋を恨む者も多く、中でも伊助という若者はおせん恋しのあまり、嫉妬に身を焦がしていた。

ある月ののない晩のこと、伊助は自分の気持ちを少しでも分かってもらおうと、おせんの家の軒先に忍び込んだ。ところがどうやら先客がいる様子、闇を透かして見ると、恋しいおせんの側にしゃがんで、ひそひそと声をかわしているのは憎い恋敵善作に違いなかった。かっとなった伊助は軒下に立てかけてある斧を振り上げると善作めがけて振り下ろした。「ガチッ」という音におせんは肝をつぶして家の中に駆け込み、伊助もまた斧を捨てて自分の家に逃げ帰った。

翌朝になって、おせんはおそるおそる昨夜の場所に行ってみた。庭の藁打ち石に刃物の傷あとらしいものがあり、側に斧がころがっているのを見つけた。誰の仕業だろうかとおせんは考えた。犯人は伊助に違いない。いつも自分と会うと顔を赤くしてうつむいてしまう若者のことを思い出した。それにしても善作がいなくてよかったとしみじみ思った。

以来、この藁打ち石は、まさかり石と名付けられ、邪推の心を戒めるものとして、村の八幡神社の参道の脇に祀られている。