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秋田県五城目町鵜ノ木

震災前取材

 

弥五郎稲荷は、五城目町のバスの駅脇にあり、次のような伝説を伝えている。

この地の村はずれには、昔、弥五郎という雄狐が住んでいた。弥五郎は森山坊ヶ沢の坊子という雌狐と恋仲だった。しかし弥五郎は病に冒され、床につくようになってしまった。これを心配した坊子は、若い女に化けて、五城目の鍼を得意とする医者を訪ね、弥五郎を診てくれるように頼んだ。

医者は駕籠に乗せられ、村はずれで下ろされた。そこは暗い森の中で、りっぱな屋敷があり、その奥に通されると一人の男が床に臥していた。さっそく脈をはかると、袖口から異様なにおいがただよい、その手首の骨組みも人間のものとは違っていた。

医者は、「これは魔物だ」と気付き、そ知らぬ振りをして毒薬を取り出し鍼に含ませ、胸の深いつぼに刺して帰った。翌朝、恐るおそる行ってみると、鵜ノ木森の洞穴で、灰色の大狐が血を吐いて死んでいた。

雌狐の坊子の嘆きは大きかった。弥五郎の病いを治したいという思いだったものが、逆に弥五郎は殺されてしまい、坊子狐の怒りは深く、医者を呪った。このため医者の一家はまもなく全滅し、五城目にも凶事が相次いだ。村人達は坊子の呪いを恐れ、祠を建てて弥五郎の霊を弔ったと云う。

近年、この稲荷社のすぐそばの会社の社屋を拡張するために、この稲荷を移転することが決まった夜に、社長宅の鶏が3羽、首をかみ切られて死んでいたため移転は中止になったという話もある。