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秋田県仙北市田沢湖梅沢字西田

震災前取材

 

天正寺には、次のような伝説が伝えられる。

むかし、仙北郡の神代の里に、宇治川という大力の相撲取りがいた。宇治川は力持ちであったが、もっともっと力がほしいと思い願をかけた。ある日、梅沢村のこの寺に来たところ、白い着物の女が赤子を抱いて出てきた。女は宇治川を見て、赤子を抱いてほしいと悲しげに頼んできた。宇治川は女をなにやら哀れに思い赤子を抱くと、それがすとーんと石のように重い。それが少しするといとも軽くなった。女は礼を言うと赤子を抱き、すーっと消えてしまった。

宇治川は、なにやらさらに大力になってしまったような感じがし、力試しに寺の庭石を抱えてみると、軽々と持ち上げることが出来た。うれしくなって、そこら中の庭石を抱えては田に投げ入れ、大杉をゆすっては倒し、遠くまで投げ飛ばした。

宇治川は、何度かそのようないたずらを重ねていたが、次の朝行ってみると、宇治川が投げた庭石や大杉は、すっかり元の場所に戻っている。不思議に思い村人にたずねると、それは寺の和尚がもとに戻したという。宇治川は、「上には上があるもの」と、それからはいたずらをやめたと云う。

この寺の和尚さんは、代々力が強い和尚さんだったらしく、先々代の和尚さんは、60Kgの米俵を両手に一俵ずつ軽々と持ち上げたと今に伝えている。