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秋田県鹿角市十和田草木
2011/10/02取材
この草城神社周辺の草木の里は、錦木伝説に出てくる若者の万寿の里である。草城神社は、この地の稲荷神社として創建されたもので、神社の地にはかつて館があったとされる。
この草木の里の里長の子の万寿は錦木を商っていたが、この地方の領主の娘の政子姫を市で見かけ好きになってしまった。当時、男は女を妻にしたいと思うと、その女の家の前に錦木を立てる慣わしがあった。それを女が家の中に取り入れると、嫁いでも良いということであった。
若者は、錦木を姫の家の前へ、雨の日も大風の日も、吹雪く日も毎日立て続けた。政子姫はそのような若者の姿を見ているうちに若者を好きになっていた。
しかし布を織るのが上手な政子姫は、このとき、この地に災いをもたらしていた大鷲を退散させるための、鳥の毛を混ぜた布を織っていた。姫は三年三月の間観音様に願をかけ、身を清めて布を織っていたのである。そのために、嫁に行くという約束は出来なかった。
それを知らない万寿は、来る日も来る日も錦木を立てつづけたが、あと一日で千束になるという日、女の家の門前で降り積もった雪の中でかえらぬ人となった。姫もそれから間もなく、鳥の毛を混ぜた布を織り終えると、若者の後を追うようにこの世を去った。
姫の父は、この二人をあわれに思い、若者のなきがらをもらい受け、千束の錦木といっしょに、一つの墓に夫婦として葬ったと云う。