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この日の早朝から、米軍部隊がオスプレイで続々と平壌に入り、空港や放送局など主要な施設を占拠し、主要な道路にはバリケードを築き防御を固めた。この一連の戦闘で、北朝鮮の指揮命令系統はズタズタになり、組織的な反撃は不可能と思われた。

しかしこの日の朝の時点では、金正恩の安否はまだ確認されていなかった。アメリカ軍は、金正恩の別荘と、平壌の司令部での捕虜の中で、しかるべき者をボノムリシャールに送った。この中には、モランボン楽団団長で、金正恩の元愛人と言われている玄松月と思われる女性の姿があった。

これらの捕虜の口は予想に反し軽く、特に玄松月は金正恩への恨みを持っていたためか、ためらうことなく尋問に応じた。それらによると、別荘と護衛司令部は地下の通路でつながっており、金正恩は、攻撃が始まるとすぐに、地下通路に逃げ込んだという。司令部の地下深くには、いざという時の指令室兼避難所があるといい、そこに潜んでいる可能性が高いということだった。

ただちに破壊された司令部の瓦礫は取り除かれ、捜索が開始された。数時間後には地下通路の入り口が発見され、アメリカの特殊部隊が飛び込み、警護兵2名を射殺、最奥の部屋のさらに奥の隠し部屋の中で、半裸の若い女性と抱き合って震えている金正恩を発見した。

金正恩は平壌のアメリカ軍司令部に引き立てられた。途中、平壌中心部の万寿台を通ると、かつては多くの平壌市民が花を手に訪れていた金日成と金正日の巨像は、同じ市民の手により、首に何本ものロープをかけられ、引き倒されようとしていた。それを見た米兵が声をかけたが、金正恩はそれを一瞥しただけで何の反応もなかった。

アメリカの司令部につくとすぐに、通訳を伴った訊問官が金正恩に対して静かに話した。

「我々は、あなたが降伏を宣言し、兵たちに対し武装解除を呼びかけることを望んでいる。あなたの生存はまだどこにも発表されていない。あなたの返事次第では、あなたの囚人たちのいる強制収容所に秘密裏に送ることもできる」

強烈な脅しだった。金正恩は顔を引きつらせ激しい恐怖の色を見せた。金正恩がアメリカの提案を受け入れるのに、さほどの時間は要しなかった。この捕縛から連行、降伏までの金正恩の姿と、金日成、正日の巨像が引き倒される映像は北朝鮮国内に広く発信され、もちろん世界中にも発信された。