2010/05/07取材

 

歴史散策⇒塔のへつり

この日は、午前中には仕事を終えて、午後は目一杯白河から会津若松までの奥会津路を散策する予定だった。

国道289号線を、時折遅咲きの満開の桜を目にしながら、晴天の会津路を下郷町に向かった。下郷町の主目的は、「塔のへつり」と「大内宿」だった。

いつものように、車窓から史跡標柱を見つけては停まりながら愛車ロシナンテⅡを走らせ、「塔のへつり」に着いた。この日はゴールデンウィークの終盤ではあったが、思った以上に多くの観光客が訪れていた。

「塔のへつり」は、大川の渓谷に形成された、搭状にそびえる奇岩と、崖の中腹に、川の浸食によると思われる通路状の連続する窟がおりなす景勝の地である。この日の早朝に訪れた矢祭山の久慈川渓谷と同じ渓谷美ではあるが、久慈川渓谷が「静」的な美しさと考えればこの「塔のへつり」の渓谷は「動」的な美ともいえる。

林立する巨大な自然の石塔と、水に削られ穿たれた岩窟の荒々しい自然の営みを眼前にすると、己の小ささを感じ、自然に対する畏敬の念が湧いてくるようだ。そのような思いでこの渓谷を眺めていると、林立する石塔は自然が刻んだ石地蔵にも見えてくる。

かつてはこの下郷の地は、関東地方と会津若松を結ぶ主要街道が通っていた地であり、多くの旅人が行き交った。その街道沿いのこの地を通る古の旅人たちは、この景勝の地で休息し、石塔に手を合わせたのだろう。また、断崖の中腹の通路状の岩窟には、いたるところに小石がつまれ、古の祈りが現代にも継がれているのだろう。