2013/06/10

 

歴史散策⇒発荷峠

早朝の滝ノ沢峠で、雲の十和田湖を眺め、十和田湖へ下りた。当然のことに十和田湖は雲の中で、それでも幻想的な美しさに包まれていた。十和田湖では、三湖伝説の一方の雄の、南祖坊伝説を伝える占場などを訪問し、発荷峠を通り八幡平方面へルートを取ることにした。

早朝の滝ノ沢峠では雲の湖を眺め、たった一人でその絶景を堪能した。雲の中の湖は、その南側の発荷峠でどのような姿を見せてくれるのか。雲の上では、日はすでに高く上っているはずだ。発荷峠では、滝ノ沢峠のときの逆光の美しさとは異なる、南からの順光の明るい風景が見られるはずだ。

雲の中を、スモールランプをつけ、かつての火口の内側の急坂を上ると、途中スッと霧が晴れた。雲の上に出たのだ。まもなく、発荷峠の駐車場と展望所が見えた。空は濃い青色に晴れ渡り、足下には雲の海が広がっている。駐車場に車を停める時間ももどかしく、カメラを持って車から走り出た。

十和田湖はやはり一面の雲の中にあった。しかし早朝の、荒々しく湧き上がるような雲ではなく、ゆったりとなだらかに、雪原のように広がっている。遠くにまだ雪の残った八甲田の山々が臨める。雲は展望所のすぐ下まできている。トンと足を下ろせば、そのまま渡って行けそうな錯覚さえおぼえるほどだ。

初老のご夫婦らしき方が車を降りて、展望所に来て「オーッ」と声を上げた。町中で生活しているものが、普段の生活の中で、声をあげるほどの光景に出会えることはまずない。都市に住む多くの者達は、便利さを追い求める代償として、山や雲や水の美しさへの感動を忘れ、そしてそれらに対する畏敬の念も失っていくのだろう。

十和田湖には、かなり以前、私が高校1年生の時に、「冒険旅行」と称して訪れ、そのときにはこの発荷峠から十和田湖に下った。そのときも矢張り今日の様な青天で、雲の湖ではなかったが、友人と一緒に「オーッ」と感動の声を上げたことを鮮やかに思い出した。