2013/06/08

 

秋田の八峰町から国道101号線を北上し、青森の鯵ヶ沢に向った。幸いなことに天気は良く、この季節の、窓を一杯に開けての海岸沿いのドライブはすがすがしい。この秋田の八峰から青森の深浦までは、古くから居住する者が少なかったのだろう、人間がつくった歴史の跡は少ないようで、訪問予定の箇所も少なかった。比較的長い距離をゆったりと走った。

途中、「十二湖」の表示を何度か見かけた。私はこれまで十二湖の存在は知らなかった。この地は、岩木山、そして竜飛岬まで続く津軽国定公園の一部だったのだ。「十二湖」は、今回の散策予定箇所には入ってはいなかった。しかし地元の方々が、胸をはって表示板を出しているのだ。行かないわけにはいかない。予定といってもいつものようにあって無いようなものだ。

途中の道路標示にしたがって国道を東に折れ県道を進んだ。天気はすっきりと晴れ渡っている。途中右手に白い岩肌が美しい山体崩壊の跡らしい崖が見える。車を停めシャッターを切った。この地のもう一つの見所で「日本キャニオン」というらしい。その展望所にも寄り、白岩の絶景を堪能した。

道は湖沼群を縫うように走り、「青池」の表示のある駐車場に入った。ここまでの湖沼群は確かに美しかった。しかし、初夏の木々の間に見える風景は、日常に見られる、どこか見慣れた美しさだった。ここから先、青池へは歩いて行かなければならない。どれだけの時間を要するのかもわからず戻ろうかとも考えた。

日常の時間や締め切りに追われる日々の生活が少し頭をもたげた。しかし現地の案内板には、青池だけが他の湖沼とは違い、別の色で塗り分けられている、どうもこの十二湖の中でも特別な存在のようだ。

以前、岩手県の馬仙峡を訪れたとき、展望所の案内板を見かけながら時間に追われて寄ることなく、帰ってきてから調べ、その素晴らしさを見ることなく帰ってきたことをえらく後悔した事を思い出した。歴史散策の期間中だけは、極力、予定に縛られることがないように心がけているのだが、気がつくと予定を気にしている俗物がそこにいる。

靴紐を締めなおし、カメラの電池を確かめ青池に向った。どうやら青池は、湖沼群の最上流になるようで、小川の上流へと道は続いている。遊歩道はしっかりと整備されており、峠道の様なきつい傾斜もなく、森の香りを楽しみながらゆるゆると進む。小さな沢に入り、少し急な木の階段を上ると、そこにはこれまでと全く違う世界があった。

青池は、鬱蒼とした木々に囲まれた薄暗がりのなかに、初夏の木陰の濃い緑を面に映している。しかし木々の合間を通してさす光が当たっている水面だけは、濃いブルーに光っている。いや水面が光っているのではなく、その色は水底から湧き上がるように光っている。水底には朽ちた木が沈んでいるのが見える。ここは恐らく、白神山地からあふれ出た水の湧水地なのだろう。限りなく透明な水が、日の光の青色を閉じ込めているようだ。

旅を続けていると、時折このような非日常の光景に出会うことがある。人はそれを畏れ、その非日常に神仏の姿を見たのかもしれない。人はその畏れをそれぞれの言葉で伝え、そこに伝説が生まれていったのだろう。

この地は白神山地の北西麓だ。湖沼群をたどってこの青池を見た。もしかすると、さらにこの山を分け入れば神仏に出会えるかもしれない、そのような気持ちにすらなった・

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